北海道大学大学院環境科学院 生物圏科学専攻 森林圏フィールド科学コース

Course of Forsest Conservation, Division of Biosphere Science, Graduate School of Environmental Science, Hokkaido University

生物多様性分野

生物の環境との付き合い方を観る

樹木を中心とした森林生物群集の生物間相互作用や環境変動に対する応答を大規模野外実験や長期モニタリングなどを通して調べ、森林生態系の維持・変動メカニズムの解明を目 指しています。
フィールドの研究手法は多岐にわたります。研究林全体を巨大な実験室と考えて、高さ20m成木の枝や地下部を電熱線で暖めたり、また森林内で シカ密度を実験的に操作するなど大規模野外実験を積極的に導入して、生物と環境との相互作用の直接的な解明に努めています。
さらに、樹木が生み出す生態系機能の地理的比較研究や繁殖過程、そして昆虫・菌類の多様性の観察も長期間続けています。研究分野としては群集 生態学、植物生態学、菌類学、保全生態学が対応しています。

電熱線を用いたミズナラ成木の温暖化操作実験:高さ20mの成木の枝(左)と、その地中(右)の温度を2007年から継続的に暖め続けています。林内の観察用クレーンを活用して、蛾幼虫による食害や葉の光合成機能などについて直接的な観察と実験を行っています。

電熱線を用いたミズナラ成木の温暖化操作実験:
高さ20mの成木の枝(左)と、その地中(右)の温度を2007年から継続的に暖め続けています。林内の観察用クレーンを活用して、蛾幼虫に よる食害や葉の光合成機能などについて直接的な観察と実験を行っています。

森林の落葉量を実験的に増やしたり減らしたりすることで土壌無脊椎動物への影響を調べています。

森林の落葉量を実験的に増やしたり減らしたりすることで土壌無脊椎動物への影響を調べています。

落葉広葉樹林(左)や常緑広葉樹林(右)の林冠に自由にアクセスするためのクレーンやジャングルジム25基を使って林冠部の機能や生物多様性を調べています。

落葉広葉樹林(左)や常緑広葉樹林(右)の林冠に自由にアクセスするためのクレーンやジャングルジム25基を使って林冠部の機能や生物多様性を調べています。

野生生物の生態を調べ、保全を考える

野生動物(脊椎動物)を主な研究対象としています。行動や生活史と いった個体の特徴から、個体群の遺伝構造や個体数変動、群集構造に至るまで、さまざまレベルで研究してい ます。
野外調査や操作実験を通して「野生生物が森林生態系で果たす役割とは?」、「行動や生活史にみられる特徴 の意味とは?」、「個体数や遺伝的多様性はどのようにして決まるのか?」、等の課題に取り組んでいます。
主な研究対象は、シカ、キツネ、タヌキ、アライグマ、サル、ネズミ、コウモリ等の哺乳類、サンショウウオ やカエルなどの両生類がいます。植物ではアカエゾマツやミズナラなどの樹木を 扱っています。

対象動物

様々な野生動物を、調査や研究の対象としています。

(左上から時計回りに)アカゲラ、ユビナガコウモリとモモジロコウモリの混合コロニー、雨竜研究林のアカネズミ、和歌山研究林のアナグマ。

(左上から時計回りに)アカゲラ、ユビナガコウモリとモモジロコウモリの混合コロニー、雨竜研究林のアカネズミ、和歌山研究林のアナグマ。

自動カメラを使った動物調査

自動カメラを設置し動物の分布や行動を調査しています。下の動画は2009年に苫小牧研究林内で撮影されたヒグマの親子です。


ヒグマ幼獣


ヒグマ成獣(上の動画の母グマ)

野外での操作実験

当分野では動物の適応戦略や相互作用を調べるための操作実験を数多く実施しています。

野外池での操作実験の様子。囲い網を複数設置し、両生類の生活史戦略と捕食-被食関係を研究しています。 野 外池での操作実験の様子。囲い網を複数設置し、両生類の生活史戦略と捕食-被食関係を研究しています。

研究テーマ例

エゾアカガエルのオタマジャクシは外敵のエゾサンショウウオ幼生がいる環境では、サンショウウオに丸呑みされないように頭を膨らませること が知られています。岸田助教の研究グループはこの防御 戦略の進化プロセスと生態学的意義を調べています。下にある2つの動画で、サンショウウオがいない池の“普通のオタマジャクシ”(上)と、サ ンショウウオがいる池の“膨れたオタマジャクシ”(下)をみることができます。


エゾアカガエルのオタマジャクシだけの池の中。オタマジャクシは普通の形をしています。


エゾサンショウウオ幼生とエゾアカガエルのオタマジャクシが同所的にすむ池の中。オタマジャク シの頭胴部が大きく膨らんでいます。

スタッフ